ストレスチェックの実施者は誰がなれる?
人事担当者が関われない範囲まで解説
「そろそろストレスチェックを始めないといけないが、うちには産業医も保健師もいない」「人事の担当者が集計まで全部やればいいのでは?」——2028年4月の義務化拡大を前に、いま最も多く寄せられる質問です。
結論から言うと、ストレスチェックは誰でも実施できるものではなく、法令で担い手が決められています。そして、人事担当者が関わってはいけない範囲が明確に存在します。この記事では、実施者になれる人、実施事務従事者との違い、そして自社に有資格者がいない場合の現実的な選択肢を整理します。
実施者になれるのは、この人たち
ストレスチェックの「実施者」になれるのは、次の資格を持つ人に限られます。
| 資格 | 研修の要否 |
|---|---|
| 医師 | 不要 |
| 保健師 | 不要 |
| 歯科医師 | 厚生労働大臣が定める研修の修了が必要 |
| 看護師 | 同上 |
| 精神保健福祉士 | 同上 |
| 公認心理師 | ※研修要件の扱いは最新の規定をご確認ください |
つまり、人事担当者・衛生管理者・総務部長といった立場の人は、資格がなければ実施者にはなれません。事業者(会社)自身も実施者にはなれません。
なお指針では、その事業場の産業医が実施者となることが望ましいとされています。日頃から職場を知る医師が担当するほうが、判断の質が上がるためです。
実施者は「何を決める人」なのか
実施者は、単に検査を配る人ではありません。次のような専門的な判断を担います。
- 使用する調査票の選定
- 高ストレス者を選ぶ基準の決定(衛生委員会での調査審議を踏まえて)
- 個人の結果の評価
- 医師の面接指導が必要かどうかの判断
- 本人への結果の通知
これらは医学的・専門的な判断を含むため、資格者に限定されています。「誰がやっても同じ」ではないのです。
実施事務従事者との違い
実務でよく混同されるのが、実施事務従事者です。
| 実施者 | 実施事務従事者 | |
|---|---|---|
| 資格 | 医師・保健師等が必要 | 資格は不要 |
| 役割 | 専門的な判断(高ストレス者の選定・面接指導の要否など) | 実施者の補助(調査票の配布・回収、データ入力、結果の封入・送付など) |
| 守秘義務 | あり | あり(労働安全衛生法上の義務) |
つまり、事務作業であれば社内のスタッフが担当できます。ただし——ここに大きな落とし穴があります。
【重要】人事権を持つ人は、実施事務に関われない
解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある人は、ストレスチェックの実施事務に従事できません。
理由は明快です。個人の結果を人事権を持つ人が見てしまうと、それが人事評価に影響する(と労働者が感じる)からです。労働者が安心して正直に回答できなければ、ストレスチェックそのものが機能しません。
✕ 人事部長が結果の集計を担当している
✕ 総務課長が調査票を回収し、内容を確認している
✕ 「衛生管理者だから問題ない」と考えているが、その人が人事権も持っている
一般的には、人事権を持たない担当者を実施事務従事者に指名し、誰が実施事務従事者なのかを社内で明示しておく運用が取られます。
なお、個人の結果は、本人の同意がない限り事業者には提供されません。この点は高ストレス者への対応の記事でも解説しています。
産業医も保健師もいない会社は、どうすればいいか
ここが本題です。従業員50人未満の事業場には産業医の選任義務がないため、そもそも社内に有資格者がいないのが普通です。現実的な選択肢は3つあります。
① 外部の医師・保健師に実施者を依頼する
産業医事務所や産業保健サービス事業者に、実施者としての関与を依頼する方法です。クラウド型のストレスチェックシステムと組み合わせる形が、小規模事業場では主流になりつつあります。システムが受検・集計を担い、資格者が専門的判断を担う分担です。
② 地域産業保健センター(地さんぽ)を活用する
従業員50人未満の事業場は、地域産業保健センターの支援を無料で受けられます。高ストレス者への医師の面接指導などが対象です。ただし、ストレスチェックの実施そのものを丸ごと代行してもらえるわけではないため、実施の仕組みは別途用意する必要があります。
③ 委託先にまとめて依頼する
ストレスチェックの実施を外部機関に委託する方法です。この場合も、自社の産業医がいれば共同実施者として関与してもらうことが望ましいとされています。職場の実情を知る医師が入るほうが、判断の精度が上がるためです。
外部委託するときの確認ポイント
見積もりや契約の際、次を必ず確認してください。ここが抜けていると「結果を通知して終わり」になります。
- 実施者を誰が務めるのか(委託先の医師・保健師か、自社の産業医か)
- 高ストレス者への申出勧奨まで含まれるか
- 面接指導を行う医師の手配は含まれるか(多くの場合は別料金です)
- 集団分析は標準か、オプションか
- 労基署報告(様式6号の2)に必要な数値の集計はしてもらえるか
費用の内訳についてはストレスチェックの費用相場の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
人事担当者が調査票を配ってもいいですか?
衛生管理者がいれば実施者になれますか?
産業医がいなくても、ストレスチェックは実施できますか?
実施者は毎年変わっても問題ありませんか?
実施者がいなくても、始められます。
Good Day Check は、Web受検から集団分析・労基署報告までをひとつで完結。年¥400/人(最低¥20,000/年)。
実施者となる保健師・産業医のご紹介についても、あわせてご相談いただけます。
あわせて読みたい: 2028年の義務化拡大で何が変わる? / 高ストレス者から面談の申出がないとき / ストレスチェックの費用相場はいくら?
出典・参考: 労働安全衛生法第66条の10/労働安全衛生規則第52条の10/厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」/厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」。本記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。個別の運用は所轄の労働基準監督署・産業医等にご確認ください。