Column · 実務ガイド

ストレスチェックはいつ実施する?実施時期の決め方と年間スケジュール

公開日: 2026年9月3日 監修: 村上 郁也(産業保健師) 読了目安: 約8分

ストレスチェックの実施時期は、法令では決まっていません。決まっているのは「1年以内ごとに1回」という間隔だけ。だからこそ、何月にやるかで運用の負担が大きく変わります。健診と重なって事後措置が回らない、年度末に実施して面接指導が翌年度にずれ込む、異動直後で集団分析が使いものにならない——。この記事では、実施時期の決め方と、実施日から逆算した年間スケジュール、そして2028年4月の義務化拡大に向けて初回をいつにするかを整理します。

法令で決まっているのは「1年以内ごとに1回」だけ

労働安全衛生法第66条の10と労働安全衛生規則第52条の9は、事業者に「1年以内ごとに1回、定期に」ストレスチェックを行うことを求めています。裏を返せば、何月に実施するかは法令で決まっていません。実施時期は事業者が決めるものです。

ただし「1年以内ごとに1回」には注意が必要です。これは「年度に1回」ではなく、前回の実施から1年以内に次回を実施するという意味です。前回が2025年11月なら、次回は2026年11月までに実施する必要があります。年度で数えて「2025年度は12月、2026年度は翌年3月」とすると、間隔が15か月あき、要件を満たしません。

実施日そのものより見落とされやすいのが、実施のあとに続く期限です。結果通知・面接指導・報告書には、それぞれ目安となる期限が指針やマニュアルで示されています。

手続き期限・目安根拠
ストレスチェックの実施1年以内ごとに1回、定期に安衛法66条の10、安衛則52条の9
本人への結果通知実施後、遅滞なく(実施者から本人へ)安衛則52条の12
面接指導の申出結果通知後、おおむね1か月以内(目安)ストレスチェック指針・実施マニュアル
医師による面接指導申出後、おおむね1か月以内(目安)安衛則52条の16、指針
医師からの意見聴取面接指導後、おおむね1か月以内(目安)安衛則52条の19、指針
労基署への報告(様式6号の2)実施後、遅滞なく(常時50人以上の事業場)安衛則52条の21
記録の保存結果の記録・面接指導の記録は5年間安衛則52条の13、52条の18

「おおむね1か月以内」は指針・マニュアルに示された標準的な目安です。実施日を決めるときは、この一連の流れが実施日から約3か月続くことを前提に逆算します。

実施時期はどう決める?4つの観点

法令上の制約が少ないぶん、実施時期は運用のしやすさで決めることになります。実務で判断の軸になるのは次の4つです。

1. 健康診断と時期をずらす

定期健康診断の直後は、有所見者への受診勧奨や就業判定など、事後措置の実務が集中します。ストレスチェックの面接指導まで重なると、産業医・保健師と人事の両方が回らなくなります。健診から2〜3か月ずらすのが基本です。一方で、健診と同じ時期に案内すると受検率が上がる事業場もあり、一長一短です。人事側の体制で決めてください。

2. 異動・組織変更の直後を避ける

4月の人事異動や組織改編の直後は、回答者自身がまだ新しい職場に慣れていません。集団分析で部署ごとの傾向を見ても、異動前の職場の状態が混ざってしまいます。組織が落ち着いてから2〜3か月あけて実施すると、集団分析の精度が上がります。

3. 面接指導と報告まで年度内に収める

実施から意見聴取までは約3か月続きます。年度末の3月に実施すると、面接指導が翌年度にずれ込み、担当者の異動と重なって引き継ぎ漏れが起きがちです。遅くとも12月〜1月には実施を終える計画にすると、年度内に一巡させられます。

4. 繁忙期を避ける

決算期、年末商戦、納期の集中する月は、受検率が下がるだけでなく、回答内容が一時的な負荷を強く反映します。経年で比較するなら、毎年同じ時期に実施することも大切です。

時期向いている点注意点
6〜7月新年度の組織が落ち着き、年度内に一巡させやすい春の健診と近い場合は事後措置と重なる
10〜11月下期の始まりで職場の状態が安定。健診(春・秋いずれでも)とずらしやすい年末の繁忙業種は受検期間を早めに
1〜2月年度内ぎりぎりで一巡できる面接指導が年度をまたぐと引き継ぎ漏れの原因に
4〜5月異動直後で回答が安定しない。避けられることが多い

初年度の年間スケジュール例(11月実施の場合)

初めて実施する年は、準備に2か月、実施から意見聴取までに3か月を見ておくと余裕があります。11月に受検する場合の流れです。

時期やること担当
8月衛生委員会(または労使での話し合い)で実施方法を審議。実施者・実施事務従事者を決め、実施規程を作成。外部委託先を選定人事・衛生委員会
9月従業員への周知(目的・受検は任意・結果は本人同意なく会社に渡らないこと)。対象者名簿の整備。Web受検か紙かを決め、調査票を準備人事・実施事務従事者
10月下旬〜11月中旬受検期間(2〜3週間)。受検状況を確認し、未受検者に再案内実施事務従事者
11月下旬結果を本人へ通知。高ストレス者には面接指導の申出方法を案内実施者
12月面接指導の申出受付(結果通知後おおむね1か月以内)人事・実施者
12月〜1月医師による面接指導(申出後おおむね1か月以内)産業医・医師
1月〜2月医師からの意見聴取、必要な就業上の措置。様式6号の2を労基署へ提出(50人以上)事業者・人事
1月〜2月集団分析の結果を衛生委員会で報告し、職場環境改善を計画衛生委員会
POINT

様式6号の2には「面接指導を受けた労働者数」を記入する欄があります。法令上は「実施後、遅滞なく」提出するものですが、実務上は面接指導が終わった段階で提出する事業場が多いです。提出のタイミングは所轄の労働基準監督署に確認しておくと安心です。書き方は様式6号の2の記入例と書き方をご覧ください。

部署ごと・拠点ごとに分けて実施してもよい?

かまいません。全社を一斉に実施する必要はなく、部署や拠点ごとに時期を分けて実施できます。ただし、どの労働者についても1年以内ごとに1回という要件は満たす必要があります。報告書(様式6号の2)の「検査実施年月」には、分けて実施した場合は最後の実施年月を記入します。

一方で、集団分析で部署間を比較したい場合は、時期がずれると比較の意味が薄れます。分けて実施するなら、同じ月内に収めるか、比較は「同じ部署の前年との比較」に絞るのが現実的です。

2028年4月の義務化で、初回をいつにするか

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、2028年4月から従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。施行後は、50人未満の事業場でも「1年以内ごとに1回」の実施が必要になります。初回の実施期限など細かな取り扱いは、今後の省令・通達で示される見込みです。厚生労働省の公表内容をご確認ください。

実務の観点で確実に言えるのは、施行の前後に実施者(医師・保健師)の確保が集中することです。50人未満の事業場は全国で数十万あり、初回をすべて2028年度に集中させると、実施者も委託先も足りなくなります。2027年度のうちに一度まわしておき、施行後の初回を「2回目」として迎えるのが、もっとも無理のない準備です。

POINT

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実施日から逆算するチェックリスト

よくある質問

ストレスチェックの実施時期は法律で決まっていますか?
決まっていません。法令が求めているのは「1年以内ごとに1回、定期に」実施することだけで、何月に実施するかは事業者が決めます。健診とずらす、異動直後を避ける、年度内に面接指導まで収める、といった観点で決めるのが一般的です。
前回12月に実施しました。今回は翌年3月でもよいですか?
前回から1年以内であれば問題ありません(12月→翌年3月は15か月後なので要件を満たしません。翌年12月までに実施してください)。「1年以内ごとに1回」は年度単位ではなく、前回の実施からの間隔で数えます。
健康診断と同時に実施してもよいですか?
法令上は問題ありません。同時に案内すると受検率が上がる場合もあります。ただし健診の事後措置(受診勧奨・就業判定)とストレスチェックの面接指導が重なるため、産業医・保健師と人事の負荷が集中します。体制に余裕がない場合は2〜3か月ずらすことをおすすめします。
年度をまたいで面接指導を行ってもよいですか?
かまいません。面接指導は申出後おおむね1か月以内に実施するのが目安で、年度をまたぐこと自体は問題ありません。ただし担当者の異動と重なると引き継ぎ漏れが起きやすいため、記録と担当を明確にしておいてください。
実施のあとに入社した人はどうなりますか?
実施時点で在籍していない人は、その回の対象にはなりません。次回の実施で対象に含めます。なお、途中入社の人にも「1年以内ごとに1回」の要件は前回の全社実施からではなく、その人が対象となった実施から数えます。個別の取り扱いは所轄の労働基準監督署にご確認ください。
報告書(様式6号の2)はいつ出せばよいですか?
法令上は「検査の実施後、遅滞なく」です。報告書には面接指導を受けた人数を記入する欄があるため、実務上は面接指導が終わった段階で提出する事業場が多いです。年度末にまとめて、と後回しにすると忘れやすいので、面接指導の完了後すぐに提出してください。報告義務があるのは常時50人以上の事業場です。

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村上 郁也 産業保健師・健康経営エキスパートアドバイザー

横浜産業保健師事務所VITAL BASE。大学病院看護師・行政保健師を経て、東証プライム上場企業の産業保健師として健康経営・産業保健マネジメントを主導。現在は中小企業の産業保健体制づくりとストレスチェック実施の現場を支援しています。事務所サイト ↗

出典・参考資料

本記事は、次の法令および厚生労働省の公表資料をもとに構成しています。

本記事は公開日時点の情報にもとづく一般的な解説であり、個別の事案についての判断を保証するものではありません。「おおむね1か月以内」などの目安は指針・マニュアルに示された標準的な取り扱いで、事業場の実情に応じた運用が認められる場合があります。最新の法令・様式は厚生労働省・e-Govの公表内容をご確認いただき、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署にご確認ください。

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